この度、一般社団法人 日本歯科医学会連合 新型コロナウイルス感染症対策チームより、感染予防に関するアナウンスがなされました。アナウンスされた内容を簡潔にお伝えすると、「新型コロナウイルス感染予防には口腔ケアが重要」ということです。
口は、食べ物や飲み物だけではなく、病気を引き起こす病原体などの異物も入って来る体の入り口です。鼻や口の中の粘膜には、粘膜免疫と呼ばれる病原体に対する防御機能が備わっています。
粘膜免疫は、口から入った病原体が粘膜に付着すると、全身免疫に情報を送るのと同時に、付着した粘膜近くのリンパ組織を介して、病原体の侵入を阻止する物質(分泌型IgA)を唾液中に分泌し、素早く病原体に対応します。感染症を引き起こす様々なウイルスは喉や気管の粘膜で増殖するため、この粘膜免疫は感染防御に有効です。
唾液は細菌やウイルスを防御し、さらに口腔内の汚れも洗い流してくれます。その他にも、唾液に含まれるムチンには粘膜保護作用が、上皮成長因子には傷ついた粘膜組織を修復する作用があります。
口の中は、常に300種類以上の細菌や真菌が生息しており、私たちの体は腸内細菌と同じように、口の中の細菌とも上手に共存しています。口の中に細菌が適切に存在することで、多くの病原体の感染を防ぐのです。しかし、口の中が不衛生になり、細菌が増えてしまうと、一部の細菌が産み出す物質(プロテアーゼなど)が、粘膜の防御機能を破壊してしまうことがわかっています。また、飲み込む機能が弱っているご高齢の方は、唾液に混ざった細菌が肺に入り、肺炎を引き起こすことも知られています。
・口腔ケアを行うことによるメリット
① ウイルスが人に感染するのに必要な酵素を減らすので、感染への水際対策になる。
② 腸内細菌のバランスが整い免疫力が上がるため、ウイルスに感染しにくくなる。
③ 歯周病菌による炎症や誤嚥性肺炎になるリスクを下げ、そもそもウイルスに感染しにくくなる。
④ 口からウイルス感染することもあるので、口腔内を清潔にすることで感染リスクを下げられる。
従って、口腔ケアは、虫歯や歯周病を予防するだけではなく、様々な感染症を予防するためにも欠かせないことなのです。